大阪の家
大阪の家
堺市で高速道路から降りるとそこには背の高いマンションが立ち並んでいる
窓一つ一つから見える明かりを指で辿りながら見つめるのがいつもの私のルーティーン
ここを抜けてコンビニを曲がると見えてくるのは草が生えっぱなしになっている池だ
この池が目印
もうすぐでおばあちゃん家に着く
大阪の家は私にとって特別なところだった
年に3回、年越しの時には必ず訪れる大阪の家
大阪の家=楽しいという概念が小さいながらに埋め込まれていた
小さい頃の私はおばあちゃん家が見えるとすぐに車から飛び出した
あの匂い、薄暗い廊下
そこを抜けるとおばあちゃんがいつも座っているリビングが目の前に広がる
着いてすぐの恒例行事は身長を測ること
おばあちゃん家の大黒柱は物心ついた頃から私たちの成長を刻む特別な柱になっていた
大阪に着くのが大体夜のためほとんど残っていないカニ鍋のメインのカニ
カスをちょっとずつ食べる私たち4人家族
いつも常備してある斑鳩牛乳
腰に手を当てておばあちゃんにちゃんと飲んでいますとアピールしながら一気に飲み干す
年末はおじさんとのチャンネル権争い
ボクシングは見たくなくて紅白をいつも見たいと言ってたっけ
カビ臭くてホコリっぽいお布団はなぜか自分にとって寝心地のいい存在になっていた
二階の真ん中はタイムスリップしたような昭和な部屋
古臭い漫画も古臭い電気も今ではとても愛おしい
大阪の家はおばあちゃんが亡くなってから誰も住んでいない空き家と化していた
いつかどうにかしなきゃと話し合われていたのは知っていたが自分がいない時に売りに出されるととても気が気でなく
あの時、あの場所での思い出が走馬灯のように溢れ出てくる
なんで5年もの間一度も行かなかったのだろうか、後悔しても仕切れない
でもなんかおばあちゃんが後悔することの悔しさを教えてくれたのかな
もうあの場所に二度と踏み入れることはできない
もうあの場所でおばあちゃんとの思い出を感じることもできない
後悔は尽きないが思い出は消えることはない
絶対に
あの小さい頃に感じたこと、あそこの思い出全てが愛おしい
おばあちゃんとの思い出が詰まった空間
唯一無二の空間
大好きだった空間
大阪の家、今までありがとう
そして次の人にバトンタッチだね
またね、